タクシン元首相「デジタルマネーにより銀行でさえも疲弊するだろう」

タクシン元首相「デジタルマネーにより銀行でさえも疲弊するだろう」

タクシン元首相「デジタルマネーにより銀行でさえも疲弊するだろう」

2018年12月31日、タイの一時代を築いたタクシン元首相は「デジタルマネーにより銀行でさえも疲弊するだろう」と自身のフェイスブックとウェブサイトに新年の抱負と2019年の見通しを語る中で触れた。今までは教養があって英語圏で学んできたタイ富裕層が主流で関わってきたタイ仮想通貨(もしくは暗号通貨、暗号資産)であったが、彼の支持層である農家、貧困層、一般中流家庭にも「デジタルマネー=仮想通貨」という単語が伝わることにより国民の仮想通貨に対するマイナスイメージを変えるきっかけになるかもしれない。昨年はタイで有名な俳優が仮想通貨詐欺で逮捕された事件があり、一般層にはイメージダウンしていた。

タクシン元首相は2006年に反タクシン派の将校がおこしたクーデターにより政権を奪われてから今でも形式的には国外逃亡を続けており、主にイギリスに住んでいると思われる。過去に、本屋から出てきたところを激写された際に手にしていた本が「The Bitcoin GuideBook」であった。

タイ王国においてカリスマ的な存在であったタクシン元首相は高架鉄道(BTS)、地下鉄(MR)のインフラ整備を日本政府にお願いしたり、車輌はドイツ製のシーメンスを導入しドイツの顔色も伺った。更に東南アジア最大の空港であるスワナプーム空港建設を迅速に着手し、これを見事完成させる。空路ハブ国タイを擁立した。

自身が元警察官僚であった為、首相時代はヤーバーなどの麻薬犯罪を厳しく取り締まり大麻犯罪は大撃滅。国民の8割以上は彼を支持し、このまま政権がずっと続くと思われた。しかしある日の記者インタビューで、今後のタイを問う質問の中にタクシン元首相は王室批判的なニュアンスを発言し、これをきっかけに徐々に王政支持派からタクシン排除の動きへと変貌していく。タクシンが最もタイで排除したかったのは建国から脈々とつづく既得権益層であった。

2006年9月19日の夜。タクシン元首相が外国訪問のために飛び立った頃合いを見て陸海空最高幹部は警察官僚らと共にすべての放映番組を止め電波放送を占拠。下士官たちは首相府を掌握した無血クーデターとなった。この日を境にタクシン元首相は国外逃亡を続けることとなる。

タクシン元首相は数々のビジネスをタイに誘致してきた先見の明をもった人物である印象が今でも鮮明にタイ国民の中にある。外国からのタイ投資は活発になりタイ経済は好調だった。そんな元首相が語った抱負の中に以下の文章が含まれたことは大きな意味を為す。

銀行のような大きな組織であってもデジタルマネーの誕生により疲弊していく。なぜならほとんどの国がデジタルマネーとお札を併用していくだろう。 

原文:(https://www.thaksinofficial.com/hny2562/)

タイクリプト界隈では彼の言葉を否定的に捉える者も少なくない。タクシン元首相は自身が首相時代に築いた莫大な資産を仮想通貨に置き換えて逃亡生活を続けると見ているからだ。その背景の一つに、タクシン一族が保有していたタイエアアジア株(マレーシア企業エアアジアとの合弁)をシンガポール政府系投資会社テマセクに売却しタイ航空法の外資規制にふれた事件がまだ記憶に新しい。売却後に手にした巨額資産にかかる納税もまだされておらず成長を続けていたタイ企業を自身の都合で売却した事件を今でも売国と同類視されている。

一方でタイ王国としては「デジタルマネー」という単語を政治的な影響力がまだ強く残る人物が使いフェイスブックや自身のウェブサイトで発信していることで仮想通貨のプレゼンスがまた上がったのではないかという見方もある。タイ一般層にもタクシン元首相の声が広く届くからだ。そしてタイはツイッターなどのSNSよりもフェイスブックが主流である。

タイ王国はこのほどZCoinの技術を利用した選挙を検討しているがこのようなニュースは仮想通貨に関わる者にしかほとんど伝わらない。他国よりも早くブロックチェーン技術を使い、不正を防ぐねらいがある背景には度重なる不正投票疑惑がある国ならではの事情がある。その引き金となっているのが皮肉にもタクシン元首相とその後継者となった妹のインラック元首相だ。

選挙の度にタクシン派が勝利を収める背景を不正投票と捉える王政支持派のタイ国民にとっては正にマッチした技術であろう。

いずれにせよ、タクシン元首相がフェイスブックで発言した「デジタルマネー」はまた幅広くタイ国民に仮想通貨、暗号資産に興味を与えたはずである。合計4.6万人からの「いいね」、シェアは5000件以上に上る。

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